
こんにちは。慶国寺の渡辺知応です。
今月のテーマは
「定め(さだめ)」
という仏教の言葉です。
「さだめ」という言葉は、日常でよく耳にします。
「これも定めだから仕方がない」といったように、
運命や避けられない出来事を示すことが多いでしょう。
けれども仏教で説かれる「さだめ」は、
少し違った意味を持っています。
仏教の基本は
「原因があれば結果が生まれる」
という因果の道理です。
私たちが今日出会っている現実は、
過去の言葉や行い、
心のあり方から自然に生じた「必然」であり、
それを「さだめ」と捉えることができます。
つまり、
「さだめ」は天から与えられるものではなく、
日々の行いによって自ら形づくっているのです。
この視点に立つと、
未来は決められているのではなく、
今の選択次第で変えられることがわかります。
人に優しい言葉をかければ温かな空気が広がり、
やがて自分に返ってきます。
反対に不平や愚痴ばかりを口にすれば、
不満の空気を呼び込み、
自分を苦しめる「さだめ」となってしまいます。
小さな行動が未来の姿をつくるのです。
大切なのは「定めだから仕方ない」と諦めないこと。
仏教では誰もが尊い命を持ち、
智慧と慈悲を育めると説かれます。
つまり、どんな境遇でも
「新しいさだめを選び直す」ことができるのです。
日々の暮らしには、
病気や人間関係、仕事など、
思うようにならない出来事も多くあります。
しかしそこで投げやりになるのではなく、
「ここから何を学び、どんな一歩を踏み出せるか」と
問い直すことが、新しい因を生み出し、未来を明るくします。
仏教の教えは、
運命をただ受け入れて耐えることを勧めているのではありません。
「今をどう生きるかが未来を変える」という希望を示しています。
法華経の精神もまた、
誰もが尊く、
これからの歩みによって未来を開くことができると説きます。
その視点に立てば、「さだめ」は重苦しいものではなく、
「安心して前を向くための道しるべ」となるのです。
未来は誰かに決められたものではなく、
自分の心のあり方から生まれるもの。
今この瞬間を大切に積み重ねることで、
よりよい「さだめ」を築いていけるのです。