お釈迦さまは、いわゆる「死後の世界」について、明確な提言をされていません。
つまりノーコメントということです。
あるとき、1人の異教徒がお釈迦さまにこんな質問をしました。
「人間の死後はどうなるのですか?」
この問いにお釈迦さまは一切何も答えませんでした。
霊魂の有無や死後の世界というような、目に見えないものについてお釈迦さまは何を質問しても黙っていたそうです。
その異教徒は呆れました。
お釈迦さまは偉大なる思想家だと伺っていたのに一体どうした事だ。
死後の世界や霊魂の有無について何も答弁できないのか!
全く持ってがっかりである。
この異教徒はそう言ってお釈迦さまをあざ笑ったそうです。
その時です。
無言だったお釈迦さまがはじめて口を開き、こう言ったのです。
「死後の世界は今現在生きている誰1人も経験することがない。
だから、その世界が有るとか無いとかを考えるより、それよりもっと大切な事を問いなさい。」
と言い、続けてこう話されました。
「死後の世界の有無を議論している間も私たちの生きている時間はどんどん失われていくのである。
取り返しのつかない『現在』をどう生きるかのほうが、目に見えない死後の世界や霊魂の有無を考えるより、はるかに大切な事であろう。
だから、死後のことではなく、今の生き方を問いなさい。」
とお釈迦さまは言いました。
また、『一夜賢者の教え』というお釈迦さまの言葉があります。
「過ぎ去ったことをとり戻そうとしてはならない。
まだ来ていないものを願ってはならない。
過去はすでに遠い彼方のものであり、未来はまだやってきていないものである。
だから、いま、現在をたいせつにせよ」
著者:渡辺知応