
こんにちは。
慶国寺の渡辺知応です。
今月は仏教用語の「一心(いっしん)」について
少しお話ししたいと思います。
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、
じつは私たちの暮らしの中に深く関わる、
大切な教えです。
「一心」とは、
文字どおり「一つの心」。
つまり、心をひとつのことに集中させ、
雑念や迷いを取り除いた状態を指します。
仏教では、
「一心に仏を念ずれば必ず救われる」や
「一心に修行すれば悟りに至る」など、
一心という姿勢をとても大切にしてきました。
それは、まっすぐな心で向き合うことこそが、
仏道を歩むうえでの出発点だからです。
でも、「仏さまに一心になる」と聞くと、
少し遠く感じる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、一心という考え方は、
実は私たちの日常生活の中でも活かせるものです。
たとえば、毎日の食事。
家族のために作るごはんに心を込めるとき、
そこには「一心」があります。
「どうしたらおいしいって笑ってくれるかな」
と思いながら手を動かす。
それは仏さまに祈るのと同じように尊い心の働きです。
また、誰かの話を聞くとき。
スマホを見ながら返事だけしていませんか?
相手の言葉に耳を傾け、
その気持ちに寄り添うとき、
私たちは「一心」でその人と向き合っているのです。
「ありがとう」
「おかげさま」
といった感謝の言葉を、
ただ口にするだけでなく、
その一言に心を乗せて伝えることもまた、
「一心」の現れだと私は思います。
現代は情報が多く、
忙しさに追われ、
心があちこちに引っ張られる時代です。
だからこそ、
ひとつのことに心を向ける
「一心」の姿勢が自分の心を整え、
人との関係をあたたかく保つ力に
なってくれるのではないでしょうか。
「一心」は特別な修行をした人だけのものではありません。
誰でも、いつでも、日々のなかで実践できる仏教の知恵です。
まずは目の前のことに心を込めて向き合ってみる。
そうした毎日の小さな積み重ねが、
やがて人生を豊かにしていくのだと私は信じています。